組のちから
第3回 新井組 (プロデューサー編)

職業「CMプロデューサー」に至るまで

 ディレクターにとってパートナーで、また制作時においての取りまとめ役として、なくてはならないプロデューサーの存在。プロデューサー陣は、どうしてこの職業を目指して、今の仕事をしているのか。

新井組-Photo

松本:どちらかと言うと、僕は気づいたらプロデューサーになっていたという感じなんです。映像に興味を持ち始めたのも会社に入ってからで、もともと映像業界志望ではなく、アルバイトみたいな形で会社に入ったんですよ。その中で、こういう世界もあるんだな、面白い人たちがいっぱいいるんだなって見えてきて、こういう人たちと一緒に何かを作り出す仕事がいいなって思うようになっていって。それで今に至るというところですね。

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吉上:私も制作(プロダクションマネージャー)という仕事で入ったので、もともとプロデューサーという仕事に興味あったわけではないんですよ。松本さんと同じで気づいたらなっていたというか、周りの人から勧められて今に至っていて。でも、いろいろな方に会える仕事で、なってみてよかったです。いろいろな監督に会えますし、そういう監督をいろいろな方にまた紹介もさせていただいていまするので。やってみないと大変さも楽しさも分からなかったなって思います。

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川崎:僕は大学を卒業してCM制作プロダクションに入って、20代後半のときに自分の可能性を広げたいなと思ってROBOTに移ったんです。そうしたらいつの間にかプロデューサーになっていたという感じですね。この業界を志したのも、スーツを着なくていい仕事はないかなっていうところがスタートだったので(笑)、表現の志しがあったわけでもないんです。その分、逆に何を言われても受け入れられたというか、黙々と仕事としてやって来れたっていうのはあるんですよ。
 制作サイドって演出サイドと違って、「編集のときのお客さんのお弁当をどう手配しようか」みたいな実務の部分のほうが多いので。その中でディレクターのほうが面白いんじゃないかと思ったこともあるんですけど、第一線でやっているディレクターを見ると、やっぱりなるべき人がなっているんですよね。それで自分は制作サイドの仕事に面白みを探そうって考えるようになって。ディレクターたちに話をするもっと前の段階でクライアントさんや代理店の方と話せて、企画の大きな舵を切れるっていうのはプロデューサーの醍醐味。それぞれの仕事でそれぞれに醍醐味はあると思いますね。

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松本:最初からプロデューサーになりたいという人は、あんまりいないかもしれないですよね。ディレクターと違って、分かりづらい仕事でもあるじゃないですか。自分自身、やればやるほど“プロデューサーってなんて大変で責任が重い仕事なんだ”って思ったりもするんです(笑)。ただ、その分、自分でスタッフや予算の使い方を決めることもできるで、やり甲斐はすごくありますね。

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新井:皆さんと仕事をしながらも、僕は未だにプロデューサーとはどういうものなのか、まだ分かってないところがあるんです。今の話でその面白さはなんとなく分かりましたけど、僕はやっぱり表現が好きで表現の一番先っぽのところまで触っていたいから、ディレクターになっているんだと思いますね。それが出来ないと不満に感じてしまうから、今の仕事をやっているのかなと。

 同じものづくりの現場に関わっていても、仕事の関わり方や役割というのは人それぞれ。ディレクターがいてプロデューサーがいるからこそ、ひとつのものが形になって世に送り出されていく。
 広告制作の現場ではその都度のチームを「組」とは呼ばないとしても、それぞれの立場から映像づくりで一緒に「組」んでいるという意味では、やはりディレクターとプロデューサーそして関わるスタッフは「組」。その結束が、結晶となる。
 新井とプロデューサー陣の言葉から見えてきたもの。広告制作もやはり組の力によって支えられている。

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写真左から:

吉上由香 (よしがみ ゆか)

CMプロデューサー。2000年ROBOT入社。 新井ディレクターとは、TVCM『佐川急便』(09-11年)、オリジナル作品『つながるのうた』(11年)、MV『はじめよう』(12年)などを手がける。

川崎泰広 (かわさき やすひろ)

CMプロデューサー。2008年ROBOT入社。 新井ディレクターとは、店頭プロジェクション『ロクシタン』(13年)、Webムービー『Tissue Animals』(13年)などを手がける。

新井風愉 (あらい ふゆ)

映像ディレクター。2002年ROBOT入社。MV『はじめよう』(12年)で文化庁メディア芸術祭新人賞。Webムービー「Tissue Animals」(13年)でアヌシー国際アニメーション映画祭最優秀賞を受賞。

松本隆洋 (まつもと たかひろ)

CMプロデューサー。1994年ROBOT入社。 新井ディレクターとは、TVCM『PASMO』(07年)、TVCM『NTTドコモ/dTV』(15年)、TVCM『三井生命」(15年)などを手がける。

Text: 渡辺 水央 / Photo: 石井 健(ポートレート)

掲載日 : 2016.3.31

Text: 渡辺 水央 / Photo: 石井 健(ポートレート)

プロデューサー編