組のちから
第8回 西田組

オリジナルへのこだわり。戦略をもとに動けば、人は動かせる

西田組-Photo

オリジナルに対するこだわり。脚本家である西田にとっては、自分が生み出して書いたものを自分で描き出して作るというのは自明の理でもあるかもしれない。ただ、映画はビジネスでもあるだけに、原作ありきの企画や人気俳優のキャスティング先行の企画が多数を占めるのも業界の理。その中でオリジナルを動かすというのはたやすいことじゃない。

西田:オリジナルというのは、やっぱりこだわりでしたね。脚本では原作ものをやったりもするんですが、もともと舞台も全部オリジナルでやっていたので、自分がせっかく監督をやるなら自分で作るお話にしたいなと思ってました。自分の頭にあるものを演出までして形にできるチャンスでもあるわけで、これ以上のことはないなと。

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明石:監督として西田さんにやっていただこうとなったときに、ひとつ脚本を書いていただいたんですよね。それを預かってはいたんですが、オリジナルの企画の上、予算も掛かりそうだったので初監督作品としてはハードルは高いかも、と話しました。そうしたらちょうど『小野寺の弟・小野寺の姉』の小説を書かれていたので、だったらそれを映画化しましょうか、と。(『小野寺~』主演の)向井くん初め、西田さんのことを応援している方達が『小野寺の弟・小野寺の姉』に集まった感じがしました。オリジナル作品が形になるまでって原作ものよりも時間がかかるので、心が折れちゃう時もあるんじゃないかと思います。西田さんはそれでも自分の作りたいものに向かって進み続けているのは凄いと思います。

西田:最初はやっぱりオリジナルでもの作りをするというのは難しいことなんだなと思いましたよ。ただ、戦略をもとに動けば、人は動かせるんじゃないかなと。『小野寺の弟・小野寺の姉』に関しても小説を書いたことで、それが原作というひとつの説得材料になって。ただ、これは僕の与り知らないところですが、実際に形にしていくプロデューサーのほうがはるかに大変だと思うんですよね。人を集めたり、お金を集めたり……。

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明石:オリジナルは生み出す人が一番大変だと私は思うんです。だから脚本に書かれてある作家さんの想いを理解して、大事に守ってあげないといけないと思っています。

オリジナルを作るに当たって、「たぶん聞いたことない苦労がいっぱいあるんだろうなと。偉い人に抱かれたりしてるんじゃないかなって(笑)」とトンでもない冗談を言う西田に、「だったらもうちょっと予算もらってます(笑)」と軽口で切り返す明石。お互いに本当に大変なところは語らず、それでいて信頼して笑い合える関係性。ビジョンがはっきりしているというのは、明石が西田を称えていた点でもある。目指すところが明確にあって、それを推し進めるために堅実な方法で着実に向かっていく。才能と才覚。書き手、描き手としての才能はもちろんのこと、そんな才覚の西田だからこそオリジナルを作り出していくことができる。また、明石のオリジナルへのこだわり、それは西田という才能と才覚に対するこだわりでもある。

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