世界へインタビュー interview03
感動から共感に繋がる
世界への道
コンテンツ本部 コンテンツ部
アニメーション作家
2019年 新卒入社
ユージン
世界へインタビュー interview03
感動から共感に繋がる
世界への道
コンテンツ本部 コンテンツ部
アニメーション作家
2019年 新卒入社
ユージン
2019年、株式会社ロボットに入社後、SNS「X」で投稿した「牡蠣を食べた時の気持ち」のアニメーション作品が瞬く間に拡散され、その作品を見たミュージシャンや企業からの依頼が重なり、今では数々のCMやMVを手掛けているユージン。何気ない感動のシーンが温かみに溢れた独特な世界観で表現され、短い時間でのループに何度も見続けてしまう魅力が詰まっている。King Gnu「傘」のジャケットアートワークや、オーディオビジュアル、NHKみんなのうたで三浦大知が歌う『新呼吸』のMV、「銀河高原ビール」のWEBムービー『星夜の醸造所』をはじめ、最近ではTVアニメ『SPY×FAMILY』Season 2(テレビ東京)のエンディング主題歌のアニメーションなどを担当。デジタルながらも懐かしさや温かみに溢れた作風、感情や空気感などを表現した夢に溢れた表現力で見る人の心を魅了している。
アニメーション作家としての道筋
Xでの作品公開から、
数々のアニメーションを
手掛けて
いらっしゃいますが、
ROBOTに入社するまでの
経緯を
教えていただけますか?
高校生の時に、新聞で加藤久仁生(元ROBOT・アニメーション作家)さんが手掛けた『つみきのいえ』(2008年)でアカデミー賞をとった記事を拝見し、初めてこの会社を知りました。鉛筆のタッチで描かれた一つ一つのシーンに、つくり手の愚直さや真剣さを感じると共に、その人間味に溢れた表現力にとても感動しました。その後、理系の大学に進学し、プログラミングやCGデザインを学んでいたのですが、将来的に人間の表現が少しずつAIに代替される中、人間らしい表現力に溢れたアニメーションに携わる仕事がしたいとも感じていました。ただ自分自身がアニメーション作家になれるとは全く思っていなくて。就職活動で、ROBOTが新卒採用をしていることを知りエントリーした際も、アニメーション制作の部署での採用はなく、コミュニケーション開発本部での採用でした。だからきっと、同じ部署の方は、何ができるんだ……って、困ったんじゃないかなって思いますよ(笑)。プランナーとしてイベントの企画に携わらせていただく中、周囲の方々が僕のやりたいことを少しずつ聞いてくださり、とても有り難かったです。そこから休日にコツコツとアニメーションを作り始めて……という日々でした。
それが最初に公開された
「牡蠣を食べた時の気持ち」に
繋がるわけですね。
そうなんです。その時に所属していた部の上司に「何かつくりたいものはないのか?」と聞かれ、自分が好きなものって何だろうって考えたんです。実は僕、牡蠣が大好きなんですよ(笑)。思春期の頃、名古屋に住んでいたのですが、夏休み期間中は、僕だけ田舎に住む祖母の家で過ごしていました。その時初めて祖母と二人で海にいき、自分の手のひらよりも大きい牡蠣を初めて食べたんです。その時の海を丸ごと食べているような感動が忘れられず、その感動をビジュアル化できたら面白いのではないかと感じました。牡蠣って美味しい部分だけじゃなく、少しグロテスクだったり、怪しげな要素も持っていると思うんです。そうした要素をアクセントとして入れつつも、どこか可愛らしい雰囲気は入れていこうと方向性を決め、絵コンテを描きました。その後は着色。普通に水色を使うのではなく、牡蠣の中で熟成されたら海の色もピンクになるんではないかと……。空想の世界なので、自由な表現ができるのもアニメーションの魅力だと思います。見る人にとって分かりやすいように、起承転結がありループしても心地よい短尺の構成にしました。そこからはひたすら描く作業です。約12秒尺の中、1秒間で15枚の絵を描いたので、背景を含めると200枚以上にのぼります。全て鉛筆で描いた後に、デジタルに取り込んで着色していきます。とても根気のいる作業ではありますが、もうやるしかないっていうか(笑)。面倒臭い分、再現性が難しいので、そこに価値が生まれるとも感じています。
このアニメーションがきっかけとなって、
各方面からの依頼が殺到するわけですが…。
ご自身の内側から出てくる制作物と、
クライアントからの要望を受けて
制作するものとでは、
アイディアの出し方、
企画構成の考え方など、
どんな違いがありますか。
例えば原作ありきのもので、すでにファンがいらっしゃるような作品に自分が関わらせていただく場合は、元々の世界観を受けつつ、自分なりに楽しく魅力が感じられる表現を模索することから始めます。ですから、自分の内側から出てくる作品とは違うプロセスが必要になってきます。例えば『SPY×FAMILY』のエンディングアニメーションに携わらせていただいた時は、まずは原作を読み、それぞれのキャラクターの特徴を理解した上で、模写していく。その後にテーマ曲が上がって来るので、曲に合わせるようにイメージを膨らませていきます。アーニャ(登場人物)は二面性が魅力的なキャラクターなので、そこから紙の表裏で表現するペープサート(ウチワ型紙人形劇)のアイデアが生まれました。クラフト感を含めて、おもちゃ箱のような雰囲気が出せれば、見ている子どもたちも楽しめるのではないかと思い企画しました。自分の内側にある感動のポイントをどう表現するかを模索する企画までの行程は、とてもワクワクするものです。決まったあとは、苦行にも近い実制作が待っているんですが(笑)。
普段の何気ない仕草に
価値を生み出す
職人のような作業が
待ち受けているわけですね。
そんな中、アニメーション作りに携わる
楽しみや
モチベーションについて
聞かせていただけますか?
想像していたものが、気持ちよく動いた瞬間はとても心地良いですね。一方で、自分の頭の中にある感動を表現する力をもっと身につけなければと思うことも多々あります。例えば「歩く」というシーンですが、実際は足だけが動くのではなく、同時に身体の多数の箇所が動いているわけです。なので単純と思われる動作一つ一つを普段から注意深く観察することが大切だと思っています。そうでないと、動きにどこか違和感が生まれてしまう。かといって、全てを現実通りに表現すると、アニメーションで表現する意味がなくなってしまうような気もするんです。アニメーションだからこそ表現できる、ちょっとした違和感や引っかかりに、面白さやつくり手の表現力が生まれるのだとも感じています。「歩く」にしても「食べる」にしても、人が普段何気なく行なう行為も、アニメーションを通して表現すると、実際の映像とは違った面白さが生まれてくるんですよね。普段の何気ない行動に価値を与えるというか……。言語の壁がなく表現できるアニメーションだからこそ、海外の方とも「好き」の感覚を共有できるというのも面白みだと思っています。そういう意味では、ROBOTという会社に所属しながら、僕の感覚を自由に表現させてもらえているのはありがたいですね。仕事だから続けられている部分もありつつ、それとは別に、普段の暮らしの中で、ふと感じる面白さや感動を表現したいという、創作意欲は大切にしていきたいと思っています。そして今の時代は、簡単に世界と繋がれる時代。世界は広いですが、個々の集合体でもあると感じているんです。だからこそ、自分の感性を大切にしつつ、目の前にいる人に楽しんでもらえるものづくりを愚直に突き詰めることで、共感が得られる世界へと広がっていくのではと感じています。
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