HAG2014 制作現場より

結果発表

HAG 横浜賞 インタビュー

HAG2014 横浜賞を受賞 横浜出身の奥田さんが、アニメーションでみせる新しい横浜の魅力。
HAGへの応募から横浜プロモーションムービーの完成までの話を、
昨年の最終選考プレゼンテーションの会場となった 横浜赤レンガ倉庫にて、伺いました。

HAG 横浜賞 インタビュー

『できていないものをどうやって説明するか、人に自分の考えてる企画がいいものかを伝えるか、仕事を取っていくという意味でもそこは外せない要素なので、プレゼンの大切さを、改めて強く考えさせられました。』

ーなぜHAGに応募しようと思いましたか?
作家としてはまたとないチャンスだと思ったので。グランプリを獲ると、300万円の予算でお仕事できることがまず魅力的でした。そんなことはなかなか出来ることではないので。更に、自分のオリジナルの企画でできること、つまり自分の作家性を出したものがお仕事として作れると思ったので、それはぜひやってみたいと思って応募しました。作家は作品を作ることが仕事ですが、自分の作品制作だけで生活していくことはとても難しいという問題を多くのアニメーション作家が抱えています。HAGからはそういう状況を何とかしたいという意気込みも感じられたので、今回の応募は、今後自分がアニメーション作家としてやっていく上でそういった問題をどう克服していくかというチャレンジでもありました。

ーHAGに参加したことで、これまでと変わったことはありますか。
はい。大きかったのは、最終選考プレゼンテーションですね。
基本的にモノを黙々と作っていたい人間なので、どちらかというとプレゼンって苦手なんですよ。でも、最終選考は、コンペ形式のプレゼンテーションだったので、ここを通らずにお仕事はもらえないという状況で、苦手だなんて言っていられないという感じでした。前日と当日に、事前のリハーサルをさせてもらったことも、改めてプレゼンの重要性を考えるきっかけになりました。できていないものをどうやって説明するか、自分の考えている企画が如何にいいものだということをどう伝えるか、仕事を取っていくという意味でもそこは外せない要素なので、プレゼンの大切さを、改めて強く考えさせられました。

ーそれまでは、仕事をする上でプレゼンのような自分の企画を説明する機会はありましたか。
そういう機会自体はありましたが、ああやって大勢の方々の前でやる機会はなかったので、単純にいつも以上に緊張しました。スクリーンも大きくて。(笑)

ーHAGは時間の制限もありましたもんね。※1
そうですね。だから話す内容もメモして、原稿を作ったりしましたね。それをやることで、ポイントも明確になりました。事前のリハーサルで色々アドバイスもいただいて、反省もしつつ、どういうポイントを見せていけば良さが伝わりやすいかということを意識して考えるようになったので、今回の経験を今後、生かしていきたいと思います。
※1 最終選考プレゼンテーションは、持ち時間5分以内という時間制限が設けられていた。

ー事前のプレゼンテーション講習はいかがでしたか。※2
講習では色々なアドバイスをいただいて、見ている人がどこを見たいのかというポイントについて客観的な意見をいただいて、実際見ている人たちはこういう風に感じてるんだな、こういうとこを見てるんだなということに気づくことが出来ました。自分としてはここは話しておかないといけないなというところが、客観的にみると意外とどうでもよかったりする内容もあって、そういう部分は今回勉強させていただきました。
※2 HAGでは、最終候補者全員に対し、最終選考プレゼンテーションの前に、個別に面談そして事前プレゼンテーション講習を実施。

ー意外と伝えなければならないポイントが違ったなという感じでしたか。
そういうことが多かったですね。時間も限りあるものなので、重要じゃない情報をわざわざ出す必要はなくて、簡潔にいいところだけ見せていくというところですよね。それで、相手にいいイメージを想像させればいいんだということが大事なんだと思います。

『自分のいいところも出せ、横浜市さんにも喜んでもらえたようなので、お互いハッピーな関係で制作することができました。』

ー普段の作品制作と、今回のお仕事で違いなどは感じましたか。
今回はほとんど感じることはなかったですね。あえて言うのであれば、横浜のプロモーションCMだったので、横浜の魅力を映像で伝えなければいけない。横浜市としては見せたい場所というのがあって、今回は横浜の街をいくつか描いているんですが、ここではなく、こっちの場所を描いてほしいというような要望があったくらいですね。基本的に自由に作らせてもらえたので、全然お仕事という感じではなかったですね。絵も自分の絵で作れましたし。
自分のいいところも出せ、横浜市さんにも喜んでもらえたようなので、お互いハッピーな関係で制作することができました。

ー今回のお仕事で、印象に残っているエピソードや、苦労したことなどがあれば、教えてください。
印象に残っているのは、取材時に三渓園や山手、みなとみらい、山下公園、中華街を回ったことですね。横浜はデートスポットが多いので、カップル達の中、取材で1人歩きまわるのは、制作で追い込まれるのとは違った辛さがありました。(笑)
苦労したことは、絵のディテールを仕上げていく行程ですね。あくまで横浜のプロモーションなので、横浜という街がきちんと描写されているかどうかとか、街の変形の仕方とか、具体的にどの場所を描くか、どのモチーフを入れると効果的か等、絵柄がデフォルメや簡略化されたものだった分、そういう部分を試行錯誤しながら作りました。

ーロボットがプロデュースチームとして入っていましたが、そこの連携はどうでしたか。
制作を進めながら、どうクライアントさんに確認をとっていくか、という途中段階の進め方はかなり勉強させてもらいました。
どの段階で、どういうものを提出して、イメージを共有していくかをとても考えてくださっていて、このタイミングでは、ここまでを見せて、ここだけOKをもらっておけばいいというように、プレゼン同様にポイントを抑えることが重要なんだなと思いましたね。
おかげでスムーズにストレスなく、制作を進めることができましたね。これを一人でやっていたら、制作に加えて色々な雑務もこなさなくてはいけないので大変ですが、制作以外の部分をROBOTの皆さんにサポートしていただいたので、僕は制作にだけ集中させていただくことができました。あとは、仲間がいるという感覚がとても心強かったです。

ー普段は全て自分でやられているんですか。
そうですね基本的には全部一人です。でも間に入ってくださる方がいるとクライアントさんに対して意見も言いやすいし普段1人でやっている分、チームで作品を作っていく良さも感じました。

ー今回、制作した横浜市プロモーションムービーの作品のポイントを教えて下さい。
ポイントは断片的な個々の場所のシーンが結合して、横浜の全体像になっているところです。本来ならこんな横浜は非現実的に感じられるかもしれませんが、絵を使ったアニメーションの表現の特徴を生かした誇張の表現として描かれています。そういったアニメーションの表現としての面白さを感じていただけると嬉しいです。
あとは、あくまで今回の主役は横浜という「街」なので、人物は出てきますが、画面中央に固定されて背景である街がモーフィングしていくことで「街」を描いている点です。背景が変形していくことも、常に変化していく=「新しく」なっていくという意味合いも込めています。
内容に関して言えば『あうたびに、あたらしい 横浜』というコンセプトが既にあったので、新しさってなんだろうと考えた時に、作者の一方的な見方を押し付けないようにしたいと思っていました。それぞれ人によって街の印象も違うし、見たものによっても変わる、そういう色々な新しさを押し付けがましくなく表現できればと思ってつくりました。CMではとある男の見た横浜というものを描いたんですが、例えば僕が登場人物だったら、違う場所に行って違うものを見ているかもしれない、野毛山動物園のキリンを見てコスモワールドの観覧車に乗っているかもしれない、また違う横浜の全体像が現れると思うんです。そういった人それぞれの横浜というものを感じていただければと思っています。

HAG 横浜賞 インタビュー

△ラストカットでは、背景がモーフィングして変形している様子を一気に全て見ることができる。

ー横浜市のプロモーションムービーを作ることで改めて、横浜ってこんな街だったんだって
思ったことなどはありましたか。

古今東西の文化など色々な要素が混在しているところでしょうか。中華街や外人墓地があれば、三渓園のような日本庭園もあり、赤レンガ倉庫のような重厚な歴史的建造物があれば、みなとみらいの新しく舗装された道路があったり。都会的なビルや夜景、人々の喧騒もあれば、田舎のようにのどかな風景もあります。とにかく色々な色・形・大きさのおもちゃが横浜という小さなおもちゃ箱の中にぎゅうぎゅうに押し込まれているような印象があります(笑)。きれいに整頓されているわけではなくて、少しおもちゃがはみ出ちゃっているような感じです。でも、それが独特の雰囲気を醸し出しているように感じます。
制作にあたっては横浜の街を回って取材もしました。地元が横浜なので知っている気でいましたが、意外と知らないことの方が多いんだなと感じることは多かったですね。三渓園には小さい頃に行ったことはあったと思うんですが、どんな所だったのか全然記憶にありませんでした。取材で訪れてみると、情緒ある古い建造物や色んな種類の植物はもちろん、結婚式を挙げているカップルだったり、閉園間近の夕方になると池の周りにカメラマンのグループが集まって三重塔をバックに沈む夕日が反射する池を熱心に撮影していたり、そういう住んでいても意外と知らないことって多いんだなと感じました。

ー意外と、地元の人が一番その街の魅力に気づいていないって言いますよね。
そうですね。

『自分の作家性を出した作品をお仕事でも作っていきたい、というのが目標ですね。』

ー最後に、奥田さんがアニメーション作家として、これから挑戦していきたいことや目標などを教えて下さい。
今回こうやってお仕事で自分の作風を出せたので、作品ももちろん作っていきたいですが、お仕事とどう両立していくかっていうことですね。今回のCM制作でこういうものができますよという実績が1つ出来たので、こういったことを1つ1つ積み重ねていってもっと自分の作家性を出した作品をお仕事でも作っていきたい、というのが目標ですね。

『自分の考えを人に伝える』大切さを学んだ奥田さん。
HAGで得たプレゼン力で、活躍の場が更に広がっていきそうです。
奥田昌輝さん作の横浜プロモーション映像は、関東首都圏26館のイオンシネマにて6月20日(土)まで上映。その他、横浜でのイベントや、東京シティアイ・TIC TOKYOのデジタルサイネージで放映中です!

◎関連記事リンク 創造都市横浜サイト:http://yokohama-sozokaiwai.jp/special/10835.html

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